船舶E-mailにおけるスキャン画像(PDFファイル)の問題

船舶E-mailにおけるスキャン画像(PDFファイル)の問題についてまとめましたのでお知らせ致します。

0.まとめ

(1)解像度が適切に設定されていないスキャン画像(PDFファイルなど)が、船舶衛星通信料金の料金を押し上げている最大の原因

(2)100~200dpi、白黒またはグレースケールでスキャンしたものが船舶には最適

(3)社外からのPDFファイルは、そのまま本船に転送せず、一旦印刷してから適切な解像度で再スキャンすると、通信費を大幅に節約できる。

1.船舶E-mail通信費増大の原因

船舶管理においても経費削減が叫ばれておりますが、その一方で船舶E-mailの衛星通信料金が高額になっているケースが増えています。ある船舶の通信量(バイト数)について調査したところ、一ヶ月の通信量のうち7割をスキャン画像の添付(PDFファイル)が占めておりました。

紙ベースの書類をE-mailに乗せるためには、スキャナによるPDFファイル送付は非常に便利な機能です。しかし、多くの船社ではスキャンの解像度を正しく設定できていません。このため、不必要に「高精細度」のスキャン画像を添付し、その結果通信量が著しく増大しています。そして、これが船舶衛星通信費増大の最大の原因であると分析します。

2.PDFファイルのスキャン解像度による差異

それぞれの解像度設定によるスキャンPDFファイルの差をご参照ください。

(1)300dpi、カラー
http://www.orcajpn.co.jp/pdf/300dpi_color.pdf

これはA4一枚の書類を、300dpi、カラーでのスキャンしたPDFファイルです。多くのスキャナは標準設定でこの解像度に設定されています。しかし、この解像度でスキャンするとファイルサイズは540KBになってしまいます。

(2)150dpi、グレースケール(白黒255階調)
http://www.orcajpn.co.jp/pdf/150dpi_grey.pdf

上記と同じ書類を、150dpi、グレースケール(白黒255階調)でスキャンしたものです。こちらのファイルサイズは160KBとなっております。カラーでないというだけで、必要な情報は充分鮮明に見えます。これでデータ量は1/3以下になります。

(3)150dpi、白黒(白黒2階調)
http://www.orcajpn.co.jp/pdf/150dpi_BW.pdf

こちらは上を、150dpi、白黒(白黒2階調)でスキャンしたものです。FAXは基本的に白黒2階調ですので、FAXのような見た目になります。濃淡を調整しないとうまくスキャンできない場合もありますが、この形になると、データサイズはわずか17KBと、300dpiカラーの場合の1/40と圧倒的に小さくなります。

上記(1)(2)(3)のファイルサイズを並べて表示すると以下のようになります。

540KB > 160KB > 17KB

3.適切ではない解像度のまま本船に送付した場合の通信費損失

上記2-(1)のデータをそのまま全船に転送したとします。例として、管理船舶が20隻、船舶は全てインマルBであったとしましょう。
すると、必要な通信料は一隻当たり約USD50。20隻にメールしていますので、必要な総通信費用はおおよそUSD1,000にもなってしまいます。

多くの船舶E-mailシステムにはデータ圧縮機能がついておりますが、画像ファイルは既に圧縮がかかっているため、これ以上の圧縮効果は望めません。すなわち、500KBのスキャン画像PDFを送った場合、どのようなメールシステムを利用しても、まったく圧縮はかからず、500KB分の通信料金がかかります。

一方このデータを、2-(3)形式で作成した場合、一隻に必要な通信料金はおおよそUSD2と極めて低くなります。20隻ですと総額でUSD40となります。

USD1000-USD40= USD960

PDF作成の解像度を適切にしなかったというだけで、USD960もの損失が発生しています。

4.E-mail通信は安いはずだという誤解

一般に「船舶E-mail通信は安いはず」という認識がなされているようです。これは事実なのですが、それは「文字だけの通信だから」という側面があります。

プレーンテキストメールでA4一枚あたりの情報量を送った場合、そのデータサイズはおおよそ4KBになります。さらに圧縮も効きますので、実際に課金される通信費は2KB分程度です。文字だけの情報だからデータ量が少なく、さらに圧縮が有効であるという点に注意しなければなりません。
一方で画像情報は文字のみの情報よりも、ずっと多くの情報量を必要とします。画像の点一つが文字位置文字に相当するデータ量になります。したがってA4一枚の画像はかなり大きなサイズになってしまいます。圧縮がかからなければ、A4一枚300dpiのカラー画像は10MB以上になってしまいます。これに圧縮をかけることで、なんとか500KB程度にしているのです。
そして既に圧縮済みであるため、E-mailシステムに圧縮機能があってもそれ以上圧縮することはできません。どのような高価なメールシステムを利用しても、画像ファイルを送る限りその圧縮効果は0です。
画像ファイルは、ただの平文のメールよりも、千倍、一万倍以上もサイズが大きくなるということを認識するべきです。
そして、その通信量を節約するためには、必要最低限な解像度で画像をつくるしかありません。

5.スキャン時のファイルサイズを決定する要因

(1)dpi
これは画像の目の細かさを意味しています。この数値が多ければ多いほど画像は細かく鮮明になりますが、ファイルサイズは大きくなります。

(2)色数
カラー>グレースケール>白黒の順でサイズが大きくなります。

(3)画像圧縮
通常のスキャナで作成したPDFファイルは必ず圧縮がかかっています。たまに圧縮を切っているPDFが散見されますが、その場合は10倍以上サイズが大きくなります。

これらを適切に設定して初めて、画像ファイルの情報を必要最低限にすることができます。

6.本船に送付するために適切なスキャン画像解像度

船舶に送付する場合、

○100-200dpi
○グレースケールまたは白黒

でスキャンするのが適切な解像度です。この設定であれば、ファイルサイズは必要以上に大きくならず、本船でも鮮明に見ることができます。参考までに、インマルBでのFAX送受信の解像度は100dpi白黒です。

7.運用に関して

(1)船社にてPDFファイルを作成する場合
上記の解像度に注意してスキャンを実施するようにしてください。目安としてA4一枚のPDFファイルは100KB以下になるようにすると良いでしょう。

(2)社外から来たPDFファイルを本船に送付する場合
これが一番問題になります。多くの場合、PDFファイル作成側は、船に渡すという事情など無関係に解像度設定をしています。したがってこのファイルをそのまま本船に転送すると極めて高額な通信費用になってしまいます。
このようなケースでは、一度PDFファイルを印刷し、それを適切な解像度設定をしたスキャナでPDF作成しなおすとファイルサイズを大幅に削減することができます。

手間はかかりますが、一つのPDFファイルのサイズを変更するだけでその削減効果はUSD100単位で出てまいります。これに船の隻数と、月に送付する件数を乗算すると、USD1000単位での削減が期待できます。

7.最後に

弊社の船舶E-mailサービスでは、船舶の受信メールボックス容量を制限する設定になっております。この制限はご連絡いただければ簡単に変更することができるのですが、変更する際には「1MBあたり約1万円の通信費用がかかる(インマルBの場合)」ことを口頭でお伝えするようにしています。これはあまりにも不用意に船舶に大容量メールを送ろうとするケースがあとを絶たないからです。

「船舶に2MBのメールを送りたいので、メールボックスサイズを拡大して欲しい」

という要望を毎日のようにお受けします。そしてその2MBのメールはほとんどの場合が外部からきたPDFファイルです。
その2MBのメールを送信してしまう前に、それを再スキャンしてせめて400KBにならないかを考えていただければと存じます。2MBのファイルを400KBにできれば通信費用はUSD160削減できます。送付する船舶が10隻ならUSD1600の節約になります。
上記の事柄に注意していただければ、必ず船舶衛星通信費用の大幅な削減に繋がります。ご不明の点がございましたらお気軽にご相談ください。

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